学会からのお知らせ
【開催趣旨】
日本庭園学会は、日本庭園を多方面から総合的に研究・討議するとともに、日本庭園を軸として日本文化について考究することを趣旨としています。本学会では、日本庭園の研究を造園の専門分野のみからアプローチするのは不十分であると考えます。建築学・考古学の分野はもとより、生活文化としての茶道・華道、あるいは精神文化としての哲学・宗教、特に仏教文化の分野、さらに美術・工芸、絵画等々、そして庭づくりの現場の声等、多方面から行われてこそ、はじめてその完きを得るものと考えます。そのため、2021年から開始した本オンラインセミナーは、多彩な分野の先生に御講演をいただき、日本庭園学の深淵に触れる企画としています。 本セミナーは学会主催ですが、会員のみならず広く一般の方に向けて、様々な実践智(現場の肉声)と思考智(研究の成果)をわかりやすく話題提供し、日本庭園学のこれまでとこれからを展望していく内容です。今年度のテーマは、「文化財としての庭」です。これまでどおりZoom 利用による事前登録制にて、毎回どなたでも、世界中のどこからでも、視聴・参加可能な企画とします。皆様のご参加をお待ちしています。
【開催期間・日時】
4月15日(月)~5月27日(月)毎月曜日の18:00~19:30に開催します。但し、4月29日(月)は休日のため、4月30日(火)に実施します。また、5月6日(月)は開催しません。
【セミナーの参加方法】
参加費:無料
定 員: 300 名(非会員も参加可能)
登 録:必要。初めに登録し、Zoom リンクを入手すれば 全てのセミナーが視聴可能。事前登録は下記 URLの申込フォームから申込情報を入力してください。
申込フォーム その他:事前登録者のうち、学会員に限定して後日に見逃し配信を実施(YouTube利用、半年程度)します。この機会に学会入会のご検討をお願いいたします。
【講演内容(全6回)】
4月15日(月)青木 達司氏(文化庁)
日本における文化財庭園の状況「文化財保護法」により指定されている国の名勝庭園について、歴史と現況について概説し、その保存と継承に関わる諸課題などについて触れる。
4月22日(月)吉村 龍二氏((株)環境事業計画研究所)
文化財庭園の保存・活用計画国指定名勝や史跡の保存と活用に関して、必要な計画立案の要点と課題について、これまで報告者が関わった具体的な事例に基づき概説する。
4月30日(火)正田 実知彦氏(福岡県)
福岡県における名勝庭園の保存活用福岡県には8件の国指定名勝が存在する。その内、7件は庭園である。2017年、国指定名勝庭園を有する6市町(飯塚市・柳川市・みやま市・添田町・川崎町・築上町)による福岡県市町村名勝庭園協議会が発足した。同協議会では、これまで、庭園紹介冊子の刊行、パネル展示、庭園ゼミなどを実施し、名勝庭園の保存管理に関する知識や技術の向上を図るとともに、名勝庭園の価値を広く発信してきた。福岡県における名勝庭園の価値と保存管理のあり方、そして同協議会の活動を中心とした庭園の活用事例について報告する。
5月13日(月)山田 拓広氏(花豊造園(株) )
文化財庭園の管理と活用―実務の立場から国指定名勝庭園の維持管理を担う管理者の立場から、文化財庭園の保存・管理と活用の現状について、報告者が関わる具体的な庭園事例をあげながら概説する。
5月20日(月)イトウ マサトシ氏(「おにわさん」編集者)
文化財庭園の知名度と課題ー愛好しめぐる立場から2020年、国指定名勝庭園「藤江氏魚楽園」「時国氏庭園」の閉園。青森県指定名勝「清藤家庭園」の指定解除と解体消失。2023年、国指定名勝庭園「上時国氏庭園」の閉園。ごく一部の有名庭園を除いて集客に苦戦する「庭園」。人口減少の加速する日本の地方で文化財庭園の存在感を残すためには何が必要か。庭を愛好し全国をめぐる中で見えてきた課題について紹介する。
5月27日(月)前川 佳代氏(奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所 古代学・聖地学 研究センター)
池庭造営の系譜―京都・平泉・鎌倉・水無瀬 報告者は、平泉の庭園の源流を京都や奈良に求めてきたが、具体的な造営者はわからなかった。奥州へ侵攻した源頼朝は、平泉の堂舎を意識して永福寺を建立する。その池の造営者は明らかで、池の形と造営技術の系統から、永福寺以前の平泉毛越寺庭園や永福寺以後の水無瀬や大慈寺庭園の形と造営者について考えるところを述べたい。